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zoom RSS ハーバー・ボッシュ法のアンモニア合成が世界の人口を支える

<<   作成日時 : 2013/12/01 05:20   >>

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 ハーバー・ボッシュ法が工業化され、空気中の窒素をアンモニアへと固定化できるようになって、本年がちょうど100年目にあたる。アンモニアは硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、そして尿素の原料であり、食物増産になくてはならない化合物である。この方法がなかったならば、世界の人口はおそらくは現在の半分位にとどまっていたのではないかと想像される。アンモニア合成はそれほどに人類に大きな影響を与えた。また、アンモニアはナイロンやその他の工業製品の原料としても重要な化合物である。

 下に示した「技術の話題」は技術士により構成される大阪技術振興協会の会報、2013年11月号に掲載されたものである。非常に簡潔ではあるが、アンモニア合成の今をまとめた。アンモニアは窒素と水素から合成されるが、その製造にかかる費用のの多くが原料の水素製造にかかる。この費用を低減する試みとして、アイ’エムセップ社の取り組みを紹介した。

 下の記事への追加情報として、次のものを示しておく。

 アイ’エムセップ社(社長、伊藤靖彦)のホームページ
 アンモニアエコノミーと水素エネルギー利用(同志社大学、伊藤靖彦)
 京のまち企業訪問・アイ’エムセップ社



技術の話題  ハーバー・ボッシュ法が100歳となった今

                          技術士(化学部門)畑 啓之

 ハーバーが窒素(N2)と水素(H2)からのアンモニア(NH3)合成法を見出したのが1909年、そこにボッシュが加わり工業化に成功したのがちょうど100年前の1913年である。この業績は「空気からパンを作る」と例えられ、マルサスの予言もこれにより見事に裏切られた。40億人でも定員オーバーの地球に今や71億人が住んでいる。

 ハーバー・ボッシュ法(HB法)では鉄系触媒を用いて、高温(450℃)高圧(200気圧)の厳しい条件下に式2を行う。水素をメタンの改質反応(式1)で得ると、NH3の1分子に対して3/8分子のCO2が生じ、これは生じたNH3とほぼ同重量である。全世界のNH3生産量1億6000万トンと同量のCO2が同時に発生していることになる。

  CH4 + 2H2O → CO2 + 4H2 式1
  N2 + 3H2 → 2NH3 式2

 NH3を1トン製造するのに必要なエネルギーの一例は33.2GJ(ギガジュール)であり、その内訳は、H2の製造に31.2GJ、N2の製造に0.46GJ、HB法でのNH3合成に1.48GJである。全人類の消費エネルギーの1%強、原子炉なら約200基分に相当、がこのNH3合成に使用されている。

 HB法の反応条件を温和にするために触媒の検討が精力的になされてきた。昭和60年から平成21年の間に触媒に関する日本の公開特許が16件見出され、その内ルテニウム触媒に関するものが11件と多い。だが、現在でも、HB法の初期から用いられてきた長寿命の鉄系触媒が主流である。

 上述したように、NH3合成に必要なエネルギーのほとんどは原料H2の製造で費やされるため、式2のHB法自体をいくら改良しても、NH3の製造エネルギーの削減には限界がある。そこで近年、水素を使用しない方法が検討されている。その代表的なもののひとつが、N2と水(H2O)から電解合成によりNH3を作る試みである。

 N2 + 3H2O → 2NH3 + 1.5O2 式3

 関連する特許として(a)特開平2-54790、(b)特開2009-84615、(c)特開2012-26036、(d)特開2012-184132がある。(a)および(d)ではその収率はわずかに3〜8%であるが、(b)および(c)の発明者(伊藤靖彦、アイ‘エムセップ社)が記した論文(化学工学,77,51-54(2013))によると、この特許法により330℃、常圧、2.5V以下の電圧で収率90%が得られている。式3の自由エネルギー変化(ΔG)から計算した反応に必要な電圧は1.17Vであるが、実際にはこれより高い電圧2.0Vが必要であり、この電圧でNH3を1トン作る必要エネルギーは34.5GJと計算される。この必要エネルギーは電圧Vに比例するので、電圧Vをいかに低くできるかが工業的に重要となる。

 0〜1000℃の範囲では反応3のΔGはほぼ一定であり、反応前後での体積変化も小さいので、反応条件の変更による収率の向上には限界がある。今後は電極、電解液(溶融塩)等の改良に加え電解装置の進化も求められる。

 製造エネルギー的にはHB法に比べまだ少し不利な電解合成法であるが、電気をNH3の形に変換できるのは魅力的である。夜間の余剰電力などを式3によりNH3の形で蓄え、必要に応じて式2の逆反応によりNH3よりH2を発生させるとCO2を出さない未来型システムが構築できる。

 なお、紙面の関係で触れることはできなかったが、電解合成法以外にも多くの方法がこの日本で精力的に検討され、成果が出てきている。


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