薄目を開けて物体までの距離を測る斬新な方法とは

 雑誌「工業材料」2013年11月号に、「クモに学ぶぴんぼけ量にもとづく距離測定システム」というタイトルで、物体までの距離を測定する方法の解説がされていた。クモ(蜘蛛)が獲物までの距離をどのようにして測っているかを突き止めたという内容である。

 記事には、物体までの距離を測るのに4つの方法があると紹介されている。①左右の目の見え方の違いなどを利用した両眼立体視(人間)、②対象にピントを合わせるのに眼のレンズを調節した量で(カメレオン)、③頭部を左右に降った際に対象物がどれだけ速く動くかで(カマキリ)、④対象物のピンボケの度合いより(クモ)、とそれぞれである。今回の雑誌記事はこのクモについての記載である。今日では、人間は動物にヒントを得て新しい機能や製品を見出そうとしているが、④については、ピンボケを利用した距離の測定法がすでに存在し、この原理を用いてクモ(ハエトリグモ)が対象物までの距離を測定していることが、実験で初めて確認されたとある。そうするとこの記事に付けられたタイトルは誤りである。人間が発明したピンボケ利用距離測定システムがすでにあり、クモもその原理を利用して距離を測っていることが証明されたわけであるから、クモに学んでいるというわけではない。

 記事にはカメラの対象物までの距離の算出方法に2つの方法があると紹介されている。ピント調整を行ってピントが合った時の光学パラメータから距離を算出する方法(DFF)とピンボケ度合いを利用する方法(DFD)である。DFFはピントを合わせるのに時間を要するので、リアルタイムの距離測定には向いていない。従ってクモのDFD方式には合理性があるということのようだ。クモの眼の構造、実験結果とその説明などが記されているが、紙面の関係でここでは省略する。

 さて、このクモの目から連想される事柄は、
①眼科でメガネの度が合っているかの確認をするとき、緑の◎と赤の◎どちらがはっきり見えますか?というもの。眼に入ってくる緑色と赤色の波長が異なることを利用している。
②撮った後からどこでもピントが合う魔法のカメラ「Lytro」 入射してくる光をすべて記録、随時編集。Lytroあるいはライトロで調べると多くの情報が出てくる。多くの情報を利用するということでビッグデータの一種に位置付けられる。

 蛇足ではあるが、生物の5番目の距離測定方法としては超音波によるものがある。コウモリが超音波を発し、それが獲物にあたって跳ね返ってくるまでの時間により獲物までの距離を決定する。


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