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zoom RSS 水と空気から新エネルギーを惹起する日本特許庁公認の永久機関特許

<<   作成日時 : 2014/05/25 05:08   >>

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以前、社命により水より油を作る話をその発明者より聞き取ったことがあるが、この話もそれに近いインパクトのある話である。結論的に言えば、特許の名称と請求項にギャップのある「羊頭を掲げて狗肉を売る」特許であるが、なぜこの特許出願を日本の特許庁が特許として認めたのかがわからない。

確かに、本特許の目的は「化石燃料を消費しないで、地球上に無尽蔵に存在する水と空気を、自然の法則にしたがって活用し、社会に無害で安全な電気を大量に提供するものである。」と高邁なものである。このまま読むと、あたかも水と空気より電気が作り出されるとなり、E=MC2、すなわち水と空気から質量が消滅することがないのならば、無から有(エネルギー)を生じさせる特許であり、これは紛れもなく永久機関に関する特許の範疇に属することになる。

永久機関とはどのようなものか、そして今回取り上げた特許がどのようなものか、を以下に説明し、今回の特許の問題点にも言及していく。

なお、惹起(じゃっき)という言葉が出てくるが、次の意味がある。

大辞泉
[名](スル)事件・問題などをひきおこすこと。「独立問題が民族紛争を―する」

大辞林
 事件や問題をひきおこすこと。 「尽る期なき滑稽の葛藤を−せり/即興詩人 鷗外」




永久機関を作ること、またそれにより無限のエネルギーを生み出すことは今日では不可能と考えられている。しかし、この永久機関なる言葉は多くの人を魅了し、「ひょっとしたら・・」とのかすかな夢を抱かせる。アントニオ猪木も「永久電気用発電機」に魅了された。実際に「回転し続けるEMAモーター」と題した次のページもある。

回転し続けるEMAモーター

エドウィン・V・グレイは、入力以上の出力が得られるEMAモーターを開発した。出力の一部を入力にフィードバックすることによりずっと回転し続ける。米国特許も取得している。

3号機は32日間も回転し続け、テストはほぼ成功をおさめた。しかし、大企業や投資家の反応は冷たく、グレイは自分で合資会社を1971年に設立した。市民からの出資を受け、1973年に4号機を完成させた。グレイは燃料のいらない無公害自動車を開発しようとしたが、圧力をかけるものが出てきた。自動車メーカーや石油会社が大打撃を受けると思われたためだろう。1975年に4号機は何物かに盗まれてしまった。

合衆国特許:3890548号
名称:パルスコンデンサー放電型電子エンジン
発明者:エドウィン・V・グレイ、カルフォルニア州ノースリッジ
受託:イヴグレイ・エンタープライズ(株)
出願:1973年11月3日
公告:1975年6月17日



まず、永久機関とはどのようなものか。外部からエネルギーを与えなくても永久に動き続ける機関、これが永久機関である。そして、永久機関が特許として認められるためには、さらに過剰エネルギーを生み出すこと、すなわち無から有を生じることがその必須要件として加わる。Wikipediaでは次のようになっている。


永久機関(Wikipedia)

外部からエネルギーを受け取ることなく、仕事を行い続ける装置である。

古くは単純に外部からエネルギーを供給しなくても永久に運動を続ける装置と考えられていた。しかし、慣性の法則によれば外力が働かない限り物体は等速直線運動を続けるし、惑星は角運動量保存の法則により自転を続ける。そのため、単純に運動を続けるのではなく、外に対して仕事を行い続ける装置が永久機関と呼ばれる。

これが実現すれば石炭も石油も不要となり、エネルギー問題など発生しない。18世紀の科学者、技術者はこれを実現すべく精力的に研究を行った。しかし、18世紀の終わりには純粋力学的な方法では実現不可能だということが明らかになり、さらに19世紀には熱を使った方法でも不可能であることが明らかになった。永久機関は実現できなかったが、これにより熱力学と呼ばれる物理学の一分野が大いに発展した。

熱力学の法則の確立以後も疑似科学者や詐欺師によって、永久機関が「発明」され続けている。 日本では1993年から2001年6月の間に35件の出願があり、うち5件に審査請求があったが、いずれも特許を認められていない。一方アメリカでは1932から1979年の間に9件の特許が成立した。近年でも2002年に一件成立している。



そこで、日本の「永久機関」に関する出願について調べてみた。「永久機関」という言葉が特許のタイトルか請求項に書かれているものとの条件で検索した。その結果、昭和58年から現在までの間に84件の特許公開があったが、特許庁により特許として認められたものは1件もないことが判明した。


ところがである。最近私は日本特許庁が特許として認めた「永久機関」と思しき(おぼしき)特許を見出した。おそらくこれが日本で最初の「永久機関」に関する特許ではないかと思う。特許の詳細は後ほど説明するとして、その特許の概要は次のようである。特許に記されている図に沿って説明すると次のようになる。圧縮空気の流れを示す赤色の矢印、水の流れを示す青色の矢印は私が説明のために加えた。

画像


圧縮空気を水が入った槽の下より吹き込むと、槽の下方より上方に向かって気泡が立ち上り、この気泡の上昇につられて水の流れが起こる。この水の流れが槽の中央部に設けた自由回転可能なロータ翼に力を与え、1秒間に1回転の回転を与える。この回転力を利用して発電を行う。槽の上に吹き抜けた圧縮空気は槽右側に設けた配管を辿って戻り、循環する。従って、外部からエネルギーを加えることなく、電力を発生させ続けることが可能となる。(※外部からエネルギーが加えられているかいないかは不明である。特許の目的からするとエネルギーのインプットがないと見るのが正解であるが、記載されていないものはわからない。一番わからないのが図中10番の圧縮送風機である。全く説明がない。)


この特許は非常に読みづらい特許であるが、簡単に要約すると今述べた通りである。2008年に出願され、早期審査を経て、2011年に特許となっている。


特許に実施例はない。従って、発明の本質は「発明を実施するための最良の形態」中に記述されることになる。この記述を全文ここに引用すると次の通りでありこれで全てである。公開特許、公告特許ともに示しているが、実態がつかめない。一番悩ましいのが上で触れた圧縮送風機(10)である。これが何者かわからない。この送風に電力などのエネルギーの投入が必要であれば、この投入エネルギーが本発明の発電で得られるエネルギーより大きくなるのは必死で、これでは本発明の目的を達成することができない。これが本特許の有している最大の問題点である。発明のタイトルである「水と空気で新エネルギーを惹起する装置とその方法」は「水と空気で新エネルギー、に問題を引き起こす方法」と読み替えればまさにブラックユーモアである。



公開特許の記載

【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、密封した外壁水槽4の中心に、シャフト1を装置して、そのシャフト1に圧縮空気浮タンク2と羽根8と間仕切水槽3を固定して、水力、風力、波力、原子力、人力、本発明自体などで得た圧縮空気6を圧縮送風機10より送風して、シャフト1に新エネルギーの惹起を発生させる。

これが公告特許ではこのように変化している。

公告特許

【発明を実施するための最良の形態】
【0 0 1 7 】
本発明は、密封した外側水槽( 4 ) の中心に、固定セットしたシャフト( 1 ) と圧縮空気浮タンク( 2 ) と羽根( 8 ) 及び間仕切水槽( 3 ) を装置し、該シャフト( 1 ) を外壁水槽( 4 ) の中心で垂直に装置し、圧縮送風機( 1 0 ) で羽根( 8 ) 下部に圧縮空気(6 ) を送風して圧縮空気( 6 ) と下降水流( 1 2 ) と合流させて、該シャフト( 1 ) に回転動力を伝動し回転動力伝動装置( 9 ) 内のシャフト( 1 ) の回転動力で電気を獲得する。



公開特許から公告特許になるときに、圧縮空気の由来・出処が削除されているので、より「永久機関」特許に近づく形となってしまっている。だが、やはり、圧縮送風機については明確にされることはなかった。やはりこの特許の最大のポイントは圧縮送風機で、これ如何で本特許の有効性・有用性が決まってくるし、本特許が「永久機関」特許であるかどうかも明確になる。




【出願番号】2008-255134[2008/09/01] 【審査請求数】1 【出願種別】通常
【公開番号】特開2010-059950[2010/03/18]
【登録番号】4863023[2011/11/18] 【公報発行日】2012/01/25

【発明の名称】水と空気で新エネルギーを惹起する装置とその方法

【要約】

【課題】地球人口の増加と文明の発展は、化石燃料の大量消費を招き、化石資源の枯渇問題と地球気象の温暖化現象を引き起こしました。今私たちが地球温暖化現象を阻止しなければなりません。そして地球の未来のために化石資源を保存しなければなりません。そこで本発明は、地球上に無尽蔵にある水と空気を、自然の法則にしたがって活用して、無害で安全な新エネルギーを大量に獲得することである。

【解決手段】密封した外壁水槽4の中央に、シャフト1を装置して、シャフト1に圧縮空気浮タンク2と羽根8と間仕切水槽3を固定して、圧縮送風機10より圧縮空気6を圧縮空気浮タンク2の内部に送風する。圧縮空気6は、圧縮空気浮タンク2を満杯にして羽根8部に移行し、上昇水流5と合流して、シャフト1に毎秒一回転の回転動力を惹起する。

【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、水と空気を利用して、密閉した外壁水槽4の内側で、新エネルギーを獲得するものであるから、騒音や大気汚染の心配が無く、回転動力の提供及び回転動力を利用して発電する電気を、家庭や産業に提供するのであるから、新エネルギー開発は、産業上無限の利用可能性を秘める。

【発明者】 北岡 康宏
【出願人】 北岡 康宏(396013215)
【請求項の数記事】 【出願時】 3 【登録査定時】 3
【査定種別】 登録査定[2011/10/18]
【最終処分】 特許/登録[2011/11/18]
【審査種別】 通常審査

【審査記録】
<中間コード&名称> <日付> <拒絶理由>
A63 特許願 2008/09/02
A621 出願審査請求書 2008/12/25
A131 拒絶理由通知書 2010/09/21 36条
A523 手続補正書 2010/11/08
A01 特許査定 2011/10/18
A61 登録料納付 2011/10/26


出願時の特許請求範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1 】
密閉した外壁水槽4 の中心に、シャフト1 と圧縮空気浮タンク2 を固定して、圧縮空気浮タンク2 内に圧縮空気6 を、圧縮空気浮タンク2 の最下部より注入して、圧縮空気浮タンク2 の最下部の高さが、水深に比例して常時一定に圧縮空気浮タンク2 の浮力を保持する、圧縮空気浮タンク2 の装置。
【請求項2 】
密閉した外壁水槽4 の中心にシャフト1 を装置し、そのシャフト1 に圧縮空気浮タンク2 と羽根8 及び間仕切水槽3 を固定して、羽根8 部に圧縮空気6 と水7 を合流させて、圧縮空気6 のエネルギーと上昇水流1 1 のエネルギーによって、シャフト1 に回転エネルギーを惹起する、その装置。
【請求項3 】
密閉した外壁水槽4 の中心にシャフト1 を装置し、そのシャフト1 に圧縮空気浮タンク2 と羽根8 と間仕切水槽3 を固定して、圧縮空気6 の浮力と羽根8 部を上昇する圧縮空気6 との浮力の和によって、シャフト1 にかかる総重量を無重量化するための、シャフト1 と圧縮空気浮きタンク2 と羽根8 と間仕切水槽3 の装置。
【請求項4 】
密閉した外壁水槽4 の中心にシャフト1 を装置し、圧縮空気浮タンク2 と羽根8 と間仕切水槽3 を固定して、圧縮送風機1 0 より圧縮空気6 を、圧縮空気浮タンク2 の部分と羽根8 部分に送風して、圧縮空気6 は上昇圧縮空気5 となり、水7 は上昇水流1 1 となり、両者は水面1 4 上で水7 と圧縮空気6 となり、共に循環して再利用する、その装置。
(注釈:この記述は、永久機関を意識していると考えられるのだが。ただし、その循環が自然に起こるとは書いてない。)


(57)【確定した特許請求の範囲】・・・「羊頭を掲げて狗肉を売る」特許構造となっている
【請求項1 】
密封した外壁水槽4 の中に固定セットしたシャフト( 1 ) と圧縮空気浮タンク( 2 )と羽根( 8 ) 及び間仕切水槽( 3 ) を外壁水槽( 4 ) の中心で該シャフト( 1 ) を垂直に装置し水平線( 1 4 ) まで水を注入して圧縮空気浮タンク( 2 ) 内に圧縮送風機( 1 0 )から圧縮空気( 6 ) を充填し圧縮空気浮タンク( 2 ) に浮力を発生し余分の圧縮空気( 6) は羽根( 8 ) 部に移行し下降水( 1 2 ) 水と合流して羽根( 8 ) 部で上昇水流( 1 1 )となり上昇水流( 1 1 ) の浮力と圧縮空気浮タンク( 2 ) の浮力の和によってシャフト(1 ) を浮き上がらせシャフト( 1 ) に繋る全重量を無重量化して、シャフト( 1 ) に羽根( 8 ) と上昇水流( 1 1 ) は回転動力を惹起し回転動力伝動装置( 9 ) 内のシャフト( 1) に回転動力を伝動して回転動力伝動装置( 9 ) 内のシャフト( 1 ) の回転動力で電気を獲得する装置。
【請求項2 】
請求項1 記載のシャフト( 1 ) と圧縮空気浮タンク( 2 ) と羽根( 8 ) 及び間仕切水槽(3 ) の固定セットの装置。
【請求項3 】
請求項1 記載のシャフト( 1 ) に繋る総重量を無重量化する圧縮空気浮タンク( 2 ) の装置。



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