アルケミストは考えた

アクセスカウンタ

zoom RSS 水素自動車は本当にエコか? LNG自動車の方がCO2排出量は少ない?

<<   作成日時 : 2014/08/02 10:57   >>

かわいい ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 1

以前のブログで、私は水素自動車が環境にやさしい理由がわからないと記した。それは、たとえば、これから利用が拡大してくると期待されているエネルギー・天然ガス(主成分はメタン、CH4)を直接に利用する場合と、天然ガスから水素を作り出して利用する場合を比較しても、利用できるエネルギーに大差がないからである。また、天然ガスから水素を取り出す場合に使用するエネルギーを考えると、水素を用いる燃料電池のエネルギー変換効率が際立って高いことが求められる。そうでなければ、手数をかけて天然ガスを水素に変換する意味はない。エネルギーベースで見た変換効率は、天然ガス→水素(48〜70%、下に示した文献3)、水素燃料電池の発電効率30〜40%(下に示した文献4)といったところである。

水素社会の目的とするところは、言うまでもなく地球温暖化ガスであるCO2の排出量を低減することにある。燃料電池車がこの目的に合ったものであるかどうか、次の日本経済新聞に触発されて、再度検討することとした。


日本経済新聞(8月1日)に水素自動車に関する次の記事がある。

「究極のエコ」燃料電池車挑む 水素で発電、走行距離長く CO2ゼロなお課題
走行1kmあたりのCO2排出量グラフ
画像

燃料の水素は現在、都市ガス(主成分はメタン、CH4)や液化石油ガス(LPG)、石油を改質して作る。日本自動車研究所の報告書によると、燃料電池車が1km走って出すCO2の量は、水素の精製や輸送時の排出量も含めて78グラム。147グラムのガソリン車や132グラムのディーゼル車、95グラムのハイブリッド車より少ないが、電気自動車(55グラム)よりは多い。

関連文書(孫引き)
平成17 年度 燃料電池自動車に関する調査報告書(日本自動車研究所)


この日本経済新聞の記事によると、燃料電池車はCO2を低減する目的では優れていると考えられる。しかしながら、その諸元についてはここでは触れられていない。

そこで、下に示した文献1〜4により、燃料電池車のCO2排出量について、私なりの考察を加えた。その結果、得られたのがここに示した表であり、この結果からは燃料電池車のCO2負荷低減に関する効果は認められなかった。

画像



この表で、ガソリン車のCO2排出量を比較すると、日本経済新聞と文献2、文献3の値は近いところにあるが、文献1の値は際立って高い。この傾向は天然ガス車(LNG自動車)についても同様である。ハイブリッド車を見ると日本経済新聞と文献3は近い値となっている。

文献1で高い値となっているのは、車のライフサイクル全体を見て評価しているためであると考えられる。文献1の表(Manufacture)で燃料電池車を作るには、ガソリン車や天然ガス車を作るよりもCO2が多く排出されている。

日本経済新聞の記述の確からしさを確認するのが目的であるので、本来はその元となった日本自動車研究所の資料(2009年)を解読すべきところであるが、この資料中には解析のための資料が十分ではない。そこで、検索で得られたなかで一番新しい文献3(2009年)(文献1は2005年、文献2は2002年)に基づき判断すると、

  天然ガスから水素を製造して燃料自動車を動かしても、CO2排出量を減らすことはできない。
  逆に排出量が高くなる可能性がある。

との結論が導きだされる。その理由は、文献4の数値解析に記した通りであり、天然ガスをわざわざ水素に変換して利用するよりもそのままの形で燃料として用いたほうが、CO2の発生量が少なくなるためである。しかも、上で述べたように、燃料電池車を作るときに排出される多量のCO2を考慮すると、燃料電池車は環境を害する車という結論となる。




所感
 水素社会が地球温暖化ガスであるCO2を排出しない好ましいシステムであるとのコンセンサスは2000年〜2005年頃に形成され、その後はこのコンセンサスが大きな見直しをされることなく、一人歩きをしているように感じられる。車の種類(稼働原理)毎に走行距離あたりのCO2排出量を調べても、新しい文献を見出すことは困難であった。原子力発電で得られた夜間電力を用いて、水を電気分解して得られた水素を・・・などは、すでに状況が変化している。
 今回は比較的新しい、2009年の文献を基に解析を試みたが、上で示した通り、CO2排出量で見た限り、燃料電池車の優位性を見出すには至らなかった。



電気自動車のCO2発生量に関する調査

文献1

日本金属学会誌第69巻第2 号(2005) 237−240
燃料電池車におけるLCA(エネルギー消費量とCO2 排出量)―ガソリン車と天然ガス車との比較―

GV:ガソリン車、 CNGV:天然ガス車、 FCV:燃料電池車
画像


ライフサイクル全体を見た結果,エネルギー消費量についてはガソリン車に対してCNG 車は1.03 倍,燃料電池車は1.4 倍となった.一方,CO2 排出量についてはガソリン車に対してCNG 車は0.8 倍,燃料電池車は0.59 倍となった.



文献2

自動車情報プラットフォーム(2002)
エネルギー効率とCO2排出量の両面で優れた、圧縮水素燃料電池自動車

CO2排出量が最少の圧縮水素燃料電池

直接水素燃料電池のTank to Wheel のCO2排出はゼロである。従って、天然ガス由来の水素を使用した直接水素燃料電池自動車のCO2排出面での優位性は高くなる。なかでも、圧縮水素燃料電池自動車の1km走行で排出されるCO2は95gであり、ディーゼル、ガソリン改質燃料電池自動車をべースに比較すれば約32%の削減となる。CO2排出量95g/kmは現状レベルの約半分であり、2008年に導入されるEUのCO2排出ガス規制(企業平均)の140g/kmに比較して十分低い値である。



文献3

IEEJ(2009)
自動車用燃料としての水素エネルギーの現状と今後の動向について

画像


天然ガスの改質(詳細) pp34−36

水素ステーション(SS)と燃料電池車(FCV)の諸元 p.65
画像

※ 数値解析
  10144km/(年・台)→845lm/(年・月)→99.5km/kg−H2→31.1km/kg−CH4

燃料電池車(FCV)、ガソリン車(既存・HEV)の供給コストとCO2排出量 p.79

画像

※ 数値解析
  ガソリン換算リッターあたりの走行距離を求める。
  FCVで26.0km/リットル、ガソリン車で15.2km/リットル

画像

※ 数値解析
  天然ガス車の一般的な走行可能距離は250〜350km/20m3天然ガス。
  この走行可能距離を300kmとし、天然ガスの組成をCH4で代表すると、
  天然ガス車のCO2排出量は131g/kmと計算され、表中の168g/kmより小さな値となる。
  天然ガス自動車の経済性をもとに計算するとCO2排出量は167g/kmとほぼFCVと同じ値となる。



文献4

燃料電池自動車(Wikipedia)

燃料電池自動車への利用が考えられている固体高分子形燃料電池の発電効率は30 - 40 % である。




          ブログ一覧に戻る        ホームページ「アルケミストの小部屋」に戻る



テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
かわいい

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
燃料電池は発電させる為には暖めるなければならないし温度が下がると発電しなくなりますね。

例えて言えば、
天然ガスを燃やして暖房するか、或いは天然ガスで発電してその電気で暖房するか、の違いですね。
匿名
2014/10/05 13:10

コメントする help

ニックネーム
本 文
水素自動車は本当にエコか? LNG自動車の方がCO2排出量は少ない? アルケミストは考えた/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる