会社を崩壊へと導く経営コンサルタントの持つ「素養」とはどのようなものか?

カレン・フェラン著「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。(2014年3月、大和書房)に教えられるところが多い。

経営コンサルタントは、担当する会社を良くしようと努力をするが、多くの場合、その意図とは反対の結果を及ぼすことが多い。実際に、著者も経営コンサルタントではあるが、著者の関わった会社のいくつかは経営不振に陥り、結局は他社に身売りする事態となった。その経緯も具体的に記されている。

その記述によると、著者の現場に入っての聞き取り調査では、会社の抱える問題点は、たとえば経営陣と一般社員のあいだでのコミュニケーション不足であったり、あるいは、同じ会社の中でも部門間での意思疎通に問題があったりと、多くの場合においてコミュニケーションの問題があった。すなわち人間に起因する問題である。

社員はあくまでも人間であるから、感情も持ち、また意志も持つ。会社側はこの意志ある人間を数値で評価することに全力を尽くす。考課制度に多くの項目を用い、その合計点で社員の優劣を判定する。人はそれぞれに才能を持っているのであるから、その才能をうまく組み合わせ利用することにより、集団として会社の発展に寄与できることになるのだが、実際にはそのようなことにはなっていない。著者は、会社は1ヶ月以上をかけて社員を数値付(考課)するが、それは個人の才能を評価したり、あるいは才能を伸ばすためではなくて、給与や賞与の金額を決めるためにだけ行われていると一刀両断する。

これと同じように、会社の実力を判定するときにも多くの指標が用いられる。しかし社員の優劣を判断するときと同じく、出てきた合計点を見てみても会社の善し悪しは判定できない。経営コンサルタントは各種の技法を用い、会社を点付けし、その弱点を強化することにより会社の経営を改善するアクションをとるが失敗に終わることが多い。その主な原因は、経営コンサルタントが点付けされた点数にのみ注意を払い、会社の実態には注目していないことによるとこちらも一刀両断だ。経営コンサルタントは数字は見ているが生きた人間、社員は見ていない。

著者の経験として、著者が現場に入り込み、肌身で感じた問題点、そしてその問題点を解決する方法を上司に報告した時、著者の思いとは裏腹に、上司は自身が得意な経営手法をその企業に当てはめて実施し、その結果、その会社の経営は崩れていったと記されている。「さもありなん」 できると言われている人、出世している人がよく犯す誤りである。

経営は生き物である。日々変化して行く。経営陣も経営コンサルタントも現場に入り込み、コミュニケーションを密にすることにより、問題点や強みを把握し、自分の頭の中でPDCAを回して行く必要がある。世に知られている経営ツールはあくまでもツール(道具)であり、そのツールが使えるときは使えば良いが、日本の伝統産業の匠が自身の道具は自分で作っているように、経営ツールも現場の状況に合わせて経営コンサルタントや経営陣が自身で作っていかなければならない。

このツールを使えば必ずうまくいくというのは、うまく行く場合もあれば行かない場合もあるので、一種の幻想と思い、真の問題点がどこにあるのかから解決策を模索する姿勢が経営コンサルタントに、そして経営陣に求められる。本書を読んでそう感じた。

さらに蛇足ながら、経営そのものは経営陣の領分であるので、経営コンサルタントの意見はあくまでも参考である。経営コンサルタントが「この方法ならばうまくいきますよ」といって、その結果が悪い方向に行っても経営コンサルタントは何ら責任は取らないことを十分に認識しておくべきだろう。



著書より2箇所を引用する。

【目次】

はじめに 御社をつぶしたのは私です
Introduction 大手ファームは無意味なことばかりさせている
第1章 「戦略計画」は何の役にも立たない
第2章 「最適化プロセス」は机上の空論
第3章 「数値目標」が組織を振り回す
第4章 「業績管理システム」で士気はガタ落ち
第5章 「マネジメントモデル」なんていらない
第6章 「人材開発プログラム」には絶対に参加するな
第7章 「リーダーシップ開発」で食べている人たち
第8章 「ベストプラクティス」は“奇跡"のダイエット食品

書籍 p60~61
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書籍 p195
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この記事へのコメント

匿名
2014年11月16日 11:02
こういうハウツー物は成功したから言えることで失敗した者の回顧録は話題にもならない。

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