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zoom RSS 林原家はかくして(株)林原の経営権を失った その天国から地獄へのストーリーとは

<<   作成日時 : 2014/11/08 18:48   >>

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岡山の株式会社林原は順調な経営のさなかの2011年、突如銀行から呼び出しを受け、倒産に向けての処理が始まった。これは社長の林原健と専務の林原靖にとってはあまりにも突然の出来事であった。この10年順調に利益を上げ、社会からも「良い会社」として認められていた林原の経営者にとっては、信じられない話であり、またその後の倒産に至るまでの展開もまた信じられなかったに違いない。

株式会社林原の歴史と、倒産に至るまでの経緯は「林原家」から学ぶ〜同族経営の蹉跌(9回シリーズ)でまとめられている。このシリーズ作成の元となっているのが、次の2冊の書籍である。

 林原家 同族経営への警鐘   林原健(2014年5月、日経BP社)
 破綻 バイオ企業・林原の真実 林原靖(2013年7月、ワック株式会社)

この2冊は同族経営の中心にいた2人が、それぞれ記した書であるので、一部に自己弁護的な表現も含まれてはいるが、株式会社林原および林原の取締役に実際に起こったとされることの信ぴょう性は高い。

この2冊の書を読んで、感じたことは次のとおりである。

林原は林原健が4代目社長であるが、先代がその手腕で大きくした会社であり、土地の評価額だけでも1兆円と言われた時もある。
林原健が父の死によって社長を引き継いだのは若干19歳の大学生の時であり、家業は水飴屋。水飴業は衰退を辿っていたのでその後の進路を模索する必要があった。
林原健は、下表に示すように多くの新製品を作り出すことに成功したが、その成功には多額の研究予算が必要であり、銀行からの借入金により賄われていた。
林原健は経営を、林原靖は財務をと、兄弟でありながら互いに深く関連することなく会社の運営を続けた。
子会社のカバヤ食品は、第三者割当により、経営権が人手にわたっていた。
事態が発生したとき、社長・林原健は会社の財務状況についての認識がなかった(知らなかった)としている。
土地の評価額が下がったこと、および過去の粉飾決算位より、林原は実質的に債務超過に陥っていた。

株式会社林原の資本金は1億円であり、資本金からは中小企業に分類される。しかしながら、銀行20行からの借入金合計は1400億円と莫大なものであった。だが、この借入金の利子を支払い、なおかつ借入金の一部を返済しても利益の出る体質にまで経営は改善していた。問題は、過去の粉飾決算の後遺症で実質的なバランスシートが債務超過に陥っていたことであった。

長年続けた粉飾決算額およびその手法は次のとおりとなっている。借入銀行の数が20行と多行に亘っているが、メインの中国銀行、そしてサブの住友信託銀行がこの粉飾を知らなかったとしているところは疑問である。粉飾の手法自体は非常に「野蛮」な方法となっている。

林原の粉飾決算額(「林原家」から学ぶ〜同族経営の蹉跌(5)より)
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粉飾決算に使われた手法(林原家 同族経営への警鐘 より)
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私が注目したいのは、地方の一企業の成功ストーリーである。林原健社長の目論見はあたり、次々に新製品を生み出している。粉飾という手段を使って借入れた資金がこの開発の原資とはなっているが、借入れた金額を満たし、かつ利益を生み出すビジネスに仕上げたことは確かだ。資本効率を考えるとこの新製品開発は成功事例であり、新製品開発に至る経営判断および開発の道筋は見習うべき成功事例・ビジネスモデルと考えても良いのではないか。

国は多くの研究予算をつぎ込んでいるが、波及効果も含めて思ったほどの経済効果は生み出していないと考えられる。それに対して、この林原の研究開発の成果は優れたものとして認識されるべきである。


「林原家」から学ぶ〜同族経営の蹉跌(4) より
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株式会社林原の経営権は長瀬産業が700億円の出資で手に入れた。この出資金額、土地の売却代金、経営陣の個人資産売却などにより1400億円あった負債額の93%は返済された。林原兄弟の書籍には、売却は叩き売り状態であったので、時価の1割程度での売却もあったと記されている。時間があり、時期が合えば、この93%という数字はもう少し高い数字になっただろう。

倒産した林原を最終利益の5倍の金額で買収
専門商社の長瀬産業が“生活関連事業”に賭ける未来


このような高い返済率が達成でき、しかも現時点において利益が出ている企業であれば、経営陣はそのまま残し、再建することもできたように思う。この「天国から地獄への急展劇」で得をしたのはいったい誰なのか、林兄弟の書籍には「住友信託銀行」の振る舞いについては随所に出てくるが、損得に関しては記されていない。



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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
林原の突然の倒産には驚きました。

岡山城の目の前の林原美術館など水飴製造からバイオ企業へと華麗な変身を遂げた企業だっただけに倉敷の倉敷紡績と並び立つ優良企業でした。

オリンパスが永年の粉食決算にも関わらず倒産を免れたのとは大きな違いです。

岡山と言えば橋本龍太郎元首相の地元です。
匿名
2014/11/08 20:13
匿名様

倒産時には私も驚きました。私の認識は優良企業でした。上場されていない企業の財務バランスは見ることができないので、判断できません。
ただし、2冊の書籍を読んで受けた印象は、会社が安定軌道に乗り、今破綻処理をすれば誰かが得をする、そんな匂いがします。得をしたのが誰か? それがわかれば仕掛け人がわかると思うのですが。案外、法律事務所が焚き付けていたりして。これは私の邪推とは思いますが。

畑啓之
2014/11/09 09:03
美術館くらいなら左程問題にしなかったが林原一族には事業拡大の野心は毛頭なくチンパンジーとか古生物とか道楽に走ると銀行も先行き心配になってしまい銀行団が貸付金回収と林原の優良部門を交換に長瀬産業に買い取らせたのでしょう。
匿名
2014/11/10 16:41

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