幻に終わったSTAP細胞とはES細胞であったと言うが・・・・これで終局?
今年はSTAP細胞に日本の科学界が振り回された一年であった。1月の発表当時には、その業績の意外性と簡便性によりiPS細胞を超えるものと期待された。しかし、この発表に不可解な部分が多くあることにより検証作業が進み、本日、理研が正式に「実験中にES細胞が紛れ込んだことが原因」と発表した。これにより、STAP細胞の存在は完全に否定された。
まず本日の新聞記事より2点。
東京新聞 12月26日
「STAPはES細胞」 新たにデータ捏造2件 理研調査委報告
STAP細胞論文の問題点を調べていた理化学研究所の調査委員会(委員長・桂勲国立遺伝学研究所長)は二十六日、東京都内で会見し、STAP細胞の正体は、すでに万能性が知られている胚性幹細胞(ES細胞)だった、という報告書を公表した。刺激を与えるだけで万能細胞ができるという小保方(おぼかた)晴子氏(31)の研究は根拠を失い、結論が否定された。
桂委員長は「STAPがなかったことはほぼ確実だ。ES細胞混入の経緯は謎のままだ」と述べた。
朝日新聞 12月26日
小保方氏がES細胞混入「考えられない」 代理人
小保方晴子氏の代理人を務める三木秀夫弁護士は26日午後、大阪市内の事務所に詰めかけた報道陣に対して、理研の調査委員会がSTAP細胞ではなくES細胞が混入されていたと結論づけたことに、「そのようなことはないと思っていたので、困惑している」「(小保方さんが)自分でES細胞を入れるとは到底考えられない」と話した。
結論は「ES細胞の混入」である。WikipediaよりSTAP細胞の作り方とES細胞の作り方をこのブログの最後尾に引用した。STAP細胞製作時にES細胞が紛れ込んだということであれば、小保方さんが「受精卵が胚盤胞と呼ばれる段階にまで発生」させたことになる。受精卵はどこから来たのか? そしてSTAP細胞の製作条件でこの受精卵は胚盤胞に至ることができるのか? (理研の見解はもっと直接的である。ES細胞そのものを実験系に誰かが混入させたから、そのES細胞からマウスが生まれた、ということのようだ)
具体的には、上で示した東京新聞の記事は次のように続く。
報告書によると、成体マウスの細胞を若返りさせて、胎児マウスを作ったという実験に使われたのは、遺伝子の変異の分析から、以前理研で作られたES細胞だと分かった。
何回もES細胞が混入したことから、わざと入れた可能性があるとした。実験室には多くの人が出入りし、混入現場の目撃証言もないため、誰がしたかは突き止められなかった。「小保方氏を含め、いずれの関係者も故意・過失による混入を否定した」としている。
以上の理研の示した見解は納得できるものである。ES細胞を誰かが混入した。理研はこの混入の犯人探しはしないだろう。
さて、効果があるということの証明方法とは、具体的にはどうすることだろう? 今回のSTAP細胞は権威ある雑誌の査読をパスして掲載された。査読者はこの論文を拒否することができなかったのか? それとも拒否する必要を感じないほどに理路整然と論考されていたのか?
まず論文が投稿された時、査読者はそこに書いてある内容に捏造はないとの前提に立つ。この前提がなければ査読などはできるものではない。査読者は投稿された論文が、雑誌の投稿方針を満たすものかどうか、そして方針を満足するものであれば、その内容が掲載するに十分なものであるかを吟味する。もし、論証に弱い部分があるようであれば、掲載要件としてその部分を補足するように投稿者に促す。
STAP細胞論文もこの経緯を辿り、読むに耐えうる論文に仕上がったことと思う。その途中段階において、不足するデータをコピペで拝借したところに大きな問題があった。
ここからはSTAP細胞をはなれて一般論である。
(1)治験中の医薬品が効くか効かないかは、半数の患者にはその治験薬を、そして残りの半数には治験薬に外見を似せた疑似薬を飲ませる。結果の統計的処理により治験薬の効果が実証される。
(2)微生物を用いた実験であると、実験に供する以外の微生物が混入しないようにする。微生物を育てる培地は予め121℃、20分間処理して混雑する微生物を死滅させ、その後に目的微生物を植菌する。
(3)化学の場合には、たとえば触媒反応などを検討するときには、触媒を加えない系と触媒を加えた系を比較する。
科学的手法においては比較することが重要である。あるものが「ある」ときと、「ない」ときのひかくである。これによりあるものの効果が実証されることになる。
STAP細胞においてはどうすべきであったか。細胞培養液や用いる器具などは当然のことながら他の細胞や汚染源となる微生物は取り除いた状態にしているだろう。これは実験の基本中の基本である。その後、目的マウスの細胞をpH処理や物理的刺激処理する。するとSTAP細胞がうまれる。この実験においては何と何を比較すれば良いか?
答えはおそらく上に示した(2)の微生物にある。比較対象を化学では「ブランク」というし、医薬や微生物では「コントロール」という。STAP細胞におけるコントロールはマウスの細胞を加えない実験系だ。この実験系で通常通りに実験を行い、光る細胞が出てこなければまずは合格ということだ。この重要なコントロールは確認できていたのだろうか。論文にはコントロールの結果を示す場合もあれば示さない場合もある。ケース・バイ・ケースである。
今回のSTAP細胞騒ぎは日本の科学界に大きな教訓を残したが、その根本原因の解明にはまだ至っていない。したがって、コピペはダメという研究者倫理の部分は正せても、それ以上のことはまだ何も語っていないと思われる。
STAP細胞(Wikipedia)
従来、遺伝子の導入などによらず、外的刺激を与えることのみで、動物細胞の分化した状態を無効にして初期化(リプログラミング)し、万能細胞にすることはできないとされていたため、STAP細胞の発見は生命科学の常識を覆す大発見とされ[3][9]、細胞初期化原理の解明や医療への応用が期待された[19][20]。ここで外的刺激とは細胞を弱酸性溶液(pH5.7)に短時間浸すというような簡単な処理であるとされた[7]。
ES細胞(Wikipedia)
その製法は受精卵が胚盤胞と呼ばれる段階にまで発生したところで取り出して、フィーダー細胞 (英: feeder cell、一般にはマウス胚線維芽細胞(MEF)が使われる) という下敷きとなる細胞と一緒に培養をすると、内部細胞塊が増殖を始める。この内部細胞塊は、胎盤などの胚体外組織以外の、全ての身体の組織に分化してゆく細胞集団である。
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まず本日の新聞記事より2点。
東京新聞 12月26日
「STAPはES細胞」 新たにデータ捏造2件 理研調査委報告
STAP細胞論文の問題点を調べていた理化学研究所の調査委員会(委員長・桂勲国立遺伝学研究所長)は二十六日、東京都内で会見し、STAP細胞の正体は、すでに万能性が知られている胚性幹細胞(ES細胞)だった、という報告書を公表した。刺激を与えるだけで万能細胞ができるという小保方(おぼかた)晴子氏(31)の研究は根拠を失い、結論が否定された。
桂委員長は「STAPがなかったことはほぼ確実だ。ES細胞混入の経緯は謎のままだ」と述べた。
朝日新聞 12月26日
小保方氏がES細胞混入「考えられない」 代理人
小保方晴子氏の代理人を務める三木秀夫弁護士は26日午後、大阪市内の事務所に詰めかけた報道陣に対して、理研の調査委員会がSTAP細胞ではなくES細胞が混入されていたと結論づけたことに、「そのようなことはないと思っていたので、困惑している」「(小保方さんが)自分でES細胞を入れるとは到底考えられない」と話した。
結論は「ES細胞の混入」である。WikipediaよりSTAP細胞の作り方とES細胞の作り方をこのブログの最後尾に引用した。STAP細胞製作時にES細胞が紛れ込んだということであれば、小保方さんが「受精卵が胚盤胞と呼ばれる段階にまで発生」させたことになる。受精卵はどこから来たのか? そしてSTAP細胞の製作条件でこの受精卵は胚盤胞に至ることができるのか? (理研の見解はもっと直接的である。ES細胞そのものを実験系に誰かが混入させたから、そのES細胞からマウスが生まれた、ということのようだ)
具体的には、上で示した東京新聞の記事は次のように続く。
報告書によると、成体マウスの細胞を若返りさせて、胎児マウスを作ったという実験に使われたのは、遺伝子の変異の分析から、以前理研で作られたES細胞だと分かった。
何回もES細胞が混入したことから、わざと入れた可能性があるとした。実験室には多くの人が出入りし、混入現場の目撃証言もないため、誰がしたかは突き止められなかった。「小保方氏を含め、いずれの関係者も故意・過失による混入を否定した」としている。
以上の理研の示した見解は納得できるものである。ES細胞を誰かが混入した。理研はこの混入の犯人探しはしないだろう。
さて、効果があるということの証明方法とは、具体的にはどうすることだろう? 今回のSTAP細胞は権威ある雑誌の査読をパスして掲載された。査読者はこの論文を拒否することができなかったのか? それとも拒否する必要を感じないほどに理路整然と論考されていたのか?
まず論文が投稿された時、査読者はそこに書いてある内容に捏造はないとの前提に立つ。この前提がなければ査読などはできるものではない。査読者は投稿された論文が、雑誌の投稿方針を満たすものかどうか、そして方針を満足するものであれば、その内容が掲載するに十分なものであるかを吟味する。もし、論証に弱い部分があるようであれば、掲載要件としてその部分を補足するように投稿者に促す。
STAP細胞論文もこの経緯を辿り、読むに耐えうる論文に仕上がったことと思う。その途中段階において、不足するデータをコピペで拝借したところに大きな問題があった。
ここからはSTAP細胞をはなれて一般論である。
(1)治験中の医薬品が効くか効かないかは、半数の患者にはその治験薬を、そして残りの半数には治験薬に外見を似せた疑似薬を飲ませる。結果の統計的処理により治験薬の効果が実証される。
(2)微生物を用いた実験であると、実験に供する以外の微生物が混入しないようにする。微生物を育てる培地は予め121℃、20分間処理して混雑する微生物を死滅させ、その後に目的微生物を植菌する。
(3)化学の場合には、たとえば触媒反応などを検討するときには、触媒を加えない系と触媒を加えた系を比較する。
科学的手法においては比較することが重要である。あるものが「ある」ときと、「ない」ときのひかくである。これによりあるものの効果が実証されることになる。
STAP細胞においてはどうすべきであったか。細胞培養液や用いる器具などは当然のことながら他の細胞や汚染源となる微生物は取り除いた状態にしているだろう。これは実験の基本中の基本である。その後、目的マウスの細胞をpH処理や物理的刺激処理する。するとSTAP細胞がうまれる。この実験においては何と何を比較すれば良いか?
答えはおそらく上に示した(2)の微生物にある。比較対象を化学では「ブランク」というし、医薬や微生物では「コントロール」という。STAP細胞におけるコントロールはマウスの細胞を加えない実験系だ。この実験系で通常通りに実験を行い、光る細胞が出てこなければまずは合格ということだ。この重要なコントロールは確認できていたのだろうか。論文にはコントロールの結果を示す場合もあれば示さない場合もある。ケース・バイ・ケースである。
今回のSTAP細胞騒ぎは日本の科学界に大きな教訓を残したが、その根本原因の解明にはまだ至っていない。したがって、コピペはダメという研究者倫理の部分は正せても、それ以上のことはまだ何も語っていないと思われる。
STAP細胞(Wikipedia)
従来、遺伝子の導入などによらず、外的刺激を与えることのみで、動物細胞の分化した状態を無効にして初期化(リプログラミング)し、万能細胞にすることはできないとされていたため、STAP細胞の発見は生命科学の常識を覆す大発見とされ[3][9]、細胞初期化原理の解明や医療への応用が期待された[19][20]。ここで外的刺激とは細胞を弱酸性溶液(pH5.7)に短時間浸すというような簡単な処理であるとされた[7]。
ES細胞(Wikipedia)
その製法は受精卵が胚盤胞と呼ばれる段階にまで発生したところで取り出して、フィーダー細胞 (英: feeder cell、一般にはマウス胚線維芽細胞(MEF)が使われる) という下敷きとなる細胞と一緒に培養をすると、内部細胞塊が増殖を始める。この内部細胞塊は、胎盤などの胚体外組織以外の、全ての身体の組織に分化してゆく細胞集団である。
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この記事へのコメント
リプログラミングは業界ではちょっと違う定義の様ですよ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%B0
早い話クローンです。
ES細胞混入?はさておき、STAP細胞論文の捏造を早々に指摘した人がいることを忘れてはいけません。
3月15日時点での情報です。
「STAP細胞 信念が確信となり、確信が疑念に変わったとき・・・」
http://alchemist-jp.at.webry.info/201403/article_15.html
STAP細胞について理研の検証報告がありましたね。STAP細胞では無く、ES細胞だと結論づけているのは、仕方がないと思います。しかし、誰が何の目的でES細胞を混入したかを明らかにしていませんね。偽りの論文はいずれ第三者の検証で必ず '' 不正を指摘 '' されます。
STAP現象に付いて理論的に予測する論文があり、色々な刺激を細胞に与えて臨死体験させ、初期化のプロセスに関与するDNAを目覚めさせる実験は可能だと考えられます。従ってSTAP現象が存在する可能性はゼロではありません。広い砂浜に埋れているダイヤモンドを探すくらい難しいでしょうね。
お便りありがとうございます。
今回は、残っていたサンプルのDNAで確認されたようです。
「ないこと」「起こらないこと」を証明するのは論理的に無理があります。
砂漠の中にダイヤモンドが1個。これを見つけ出せればそこから科学は発展していきます。これからも、STAP細胞に酷似した事例は出てくることと思いますので、私としては何が出てくるかを楽しみにしています。