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zoom RSS 映画 オデッセイ(The Martian:火星の人)を楽しく見る 知っておいて損はない事前情報

<<   作成日時 : 2016/02/08 22:20   >>

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先週2月5日(金)より日本でも映画「オデッセイ」が封切られた。私も昨日映画館へ足を運んだが、大入り満員、この映画への興味の強さが感じられた。あらすじはオデッセイ(Wikipedia)に記されている。

この映画のキャッチフレーズは、

火星に取り残された生存者1名。水なし。酸素ほとんどなし。通信手段なし。食料31日分。次の救助まで1400日。地球までの距離2億2530万km。70億人が彼の帰りを待っている。

映画を見る前から興味津々である。


ここからは映画を見終わってから知っておくべきだった情報や、感じた事柄などを記す。

日本の題名「オデッセイ」は火星探査機2001マーズ・オデッセイからとっているのだろう。このひとつ前の探査機がマーズ・パスファインダー。映画はパスファインダー着陸地点エリーズ渓谷(Ares Vallis)の近くと設定されている。映画ではAres(アレス)が宇宙船の名前あるいは計画名として出てくる。

画像


火星:

平均公転半径 227,936,640 km  軌道長半径 (a) 1.52368 AU (1AUは太陽と地球の距離)
  太陽からは地球よりも遠い距離にあるので、太陽光の強さは半分以下
公転周期 (P) 686.98 日(1.880866 年)
  火星の1日を1SOLという。SOLはSolar(太陽)から
自転周期 24.6229 時間(1.026地球日)
表面重力 3.71 m/s2
  地球の表面重力は9.8m/s2であるから、火星では物がゆっくりと落下する。
平均気温 −43℃
大気圧 0.7-0.9 kPa
  地球の大気圧は101.3kPa(1気圧)であるから、地球の1/100以下
二酸化炭素 95.32%

映画のオープニングは時速190kmの嵐(岩石を巻き込んだ強風)に襲われ、ロケットで火星表面から脱出せざるを得なくなる。このとき、ロケット自体も風に押されて10度以上傾き、先端の宇宙船部分より横方向に姿勢制御ロケットを噴射して、かろうじて転倒を免れる。危機一髪で主エンジンに点火して脱出に成功するが、このとき宇宙飛行士1名が取り残される。


問題:時速190km(秒速53m)の風はそんなに威力があるものなのか?

風圧は大気密度×風速×風速に比例する。火星での時速190kmの風を地球上の風に換算すると、次式より
     火星 CO2 44  ×0.8kPa  ×190km×190km =
     地球 空気 28.8×101.3kPa×風速×風速
風速=20.9km/時間、これは秒速5.8mであり、地球上ではそよ風である。この風で地表の石が巻き上げられることはないし、ましてやロケットが倒されることもない。


問題:取り残された宇宙飛行士の宇宙服の気密はなぜ保たれたか?

宇宙服の腹部に金属棒が突き刺さった。出血したが血がすぐに固まったので気密が保たれたとある。宇宙服の外部はほぼ真空。固まる前に血が流れ出続けると考えるのが普通では。


問題:植物(じゃがいも)を育てるための水はどこから?

ロケット(あるいは燃料タンク?)より燃料ヒドラジン(NH2NH2?)を抜き出し、これを触媒で分解して窒素(N2)と水素(H2)とし、その水素を燃やして水(H2O)を得た。化学式では
      NH2NH2 → N2+2H2、   2H2+O2 → 2H2O
NH2NH2の融点は1℃であるので、平均気温がー43℃の火星では凍ってしまう。使い物にならない。宇宙開発でヒドラジンといえば融点が−50℃以下のCH3NHNH2、あるいは(CH3)2NNH2のことを言う。酸化剤はMOX(窒素酸化物N2O3とN2O4の混合物)であり、このヒドラジンとMOXは触れ合うだけで自然発火する。詳細はこちらを参照のこと。

それにしても、植物を育てるには水と光と二酸化炭素、これが必須です。水は水素の燃焼で得ましたが、二酸化炭素はどこから? (CH3)2NNH2を直接燃やすとH2OとCO2が得られますので、こちらのほうが合理的です。太陽光の強さは地球上の半分以下ですが・・・。映画では屋内栽培で、天井には普通の照明があっただけのように見受けました。


問題:酸素はどこから?

水を作るときにも水素を燃やしていますが、酸素はどこから持ってきたのでしょう。映画のキャッチフレーズにも「酸素はほとんどなし」とあります。ロケット内部に液体酸素を長時間貯めておくことはできません(蒸発気化し、高圧となる)ので、液体酸素の可能性は排除されます。電力は確保しましたから水を電気分解したのでしょうか? でも、こうして得た酸素で水素をもやして水を得るというのでは、堂々巡りの自己矛盾です。


問題:居住区入り口をプラスチックシートで封止できるか?

順調に進んでいたジャガイモ栽培ですが、ある日、爆発によりこの施設(建屋)が失われます。この建屋とつながっていた居住区の直径約2mの円形ドア部分も失われてしまいます。応急処置として、ここを透明プラスチック布で覆います。周囲は居住区の空気が漏れださないようにシッカリとしばりつけ、プラスチック布部分は破れないように、中心部分を通る8本のテープでテーピングします。居住区内部は1気圧、外部はほぼ真空。よくもつものです。面白いのは、外部で風が吹くと、その流れに従って貼ってあるプラスチック布が凸凹と揺れることです。ちょっと考えにくいですね。


問題:宇宙服ヘルメットの割れはテーピングで修復できるか?

建屋の爆発時に、映画ではヘルメットに割れが生じ、目に見える隙間が空いていました。この隙間をヘルメット外からのテーピングし、空気の漏れを止めました。


問題:ロケットで脱出準備、このときの重力加速度は?

所定の高度、速度を得る必要があります。宇宙船部分が重すぎますので、内部の備品や先端部コーンなどを外へ捨てていきます。重力の小さな火星上ではスローモーションで落下すると思うのですが、地球上のように勢いよく落下しました。


問題:救助宇宙船の減速方法は妥当か?

火星からの脱出宇宙船より宇宙飛行士をピックアップするために、速度とコースを整えながら救助宇宙船は火星に近づいていきます。地球へ帰るための燃料(推進剤)は20%残しておく必要があるので、使えるのは80%まで。計算上78%でヨシと、軌道修正します。ところが脱出宇宙船は所定の高度に達せず、救助宇宙船は減速が必要になります。救助宇宙船の先端部分に爆発物(ダイナマイト3本分の威力)を仕組んで、前方ハッチを吹き飛ばし減速に成功します。映画ではエアブレーキ、空気の吹き出す力での減速となっていますが、空気ではその重さから言って威力がないでしょう。ハッチの重さがものを言ったものと思います。ただ、ハッチは蝶番を介して一方向に開くものですから、うまくいっても救助宇宙船に回転のモーメントがかかるのは否めないと思います。

80%許容される燃料の内の78%を使いました。まだ2%の使用が可能です。軌道修正に確か30分以上の猶予がありましたから、この燃料を使って軌道修正する方が、修正の確実性も大きいと思います。


問題:脱出宇宙飛行士は宇宙服に穴をあけてジェット推進した?

指先に穴をあけ、そこから空気を噴出させて救助用宇宙船に近寄って行きました。ご愛嬌です。


私が気になったところを記しました。この映画は本来は娯楽映画ですから楽しく見るものであると思います。しかし、このブログに目を通してしまった人は、私の記述が本当か嘘かに集中することになり、映画が楽しめなくなるかもしれないと、多少申し訳なく思っています。



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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
昔、日本でもバイオスフィア実験を行っていたような...確か久慈で。
人間ではなく植物栽培だけだったはず。

爆発の原因は何だったんでしょうね。
火星は寒いのではなかったかなぁ〜

閉鎖空間なので熱が籠って暑いのかもしれないけど。

匿名
2016/03/05 13:06

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