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zoom RSS いま流行の「水素水」は本当にアンチエージングに効果があるのか? その科学的根拠は?

<<   作成日時 : 2016/06/01 21:33   >>

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日本人は健康志向が強い。水素水の流行もその一つとみてよいだろう。多くの広告がネット上を彩り、また効果があるとしている。その点、伊藤園は慎み深く、水素の量の違いにしか言及していない。

伊藤園の示す水素の量は1.9〜2.5ppm(重量ppm、mg/リットル)であり、その値には大きな幅がある。水素の量(重さ)にお金を払うのであれば、クレームが出てもおかしくない幅である。

水素は1リットルの水に25℃で1.6mg溶ける。25℃で水を1気圧の水素ガスと接触させ、もうこれ以上水に水素が溶けなくなった時の値(飽和値)である。伊藤園の1,9ppmは1.2気圧の水素で、2.5ppmは1.6気圧の水素ガスで飽和となった時の水への溶解濃度となる。

従って、伊藤園の水素水アルミ容器の空間部分には、当然のことながら100%水素ガスが1.2〜1.6気圧で封入されていることになる。


さて、私はずっと水素水は「まやかし」だと思ってきた。しかしながら、最近は富に宣伝がなされ、売れ行きも順調とある。伊藤園までもがこの業界に参入してきた。そこで、この水素水の効果を一度論理的に考えてみようと思ってこのブログをしたためた次第である。ゼロベースでの検討である。

まず、私がこの伊藤園の水素水200ml(水素濃度2.5ppm)を飲んだ時にいったい何が起こるかを考えてみる。

溶け込んでいる水素は標準状態(0℃、1気圧)のガス量に換算すると5.5mlである。実に少量だ。この水素水が食道を通って胃に達する。胃ではただ胃酸(塩酸)や他の食品と一緒にかきまぜられるだけである。ここで溶け込んでいる水素の多くの部分は水素ガスとして液体より出てくるだろう。先ほども記したように、1気圧の水素と接する水中の水素濃度(溶解度)が1.5ppmであるが、胃の中の気相部分には空気やその他のガス成分も多く存在するため、気相の水素圧力は1気圧よりもはるかに小さなものとなる。したがって、2.5ppmの水素溶解量を保持することができず、水素ガスの多くの部分が液中より気相へと飛び出してくる。さらに、気体の溶解度は温度が体温の37℃と高くなることによっても、また水に塩分が溶けてくることによっても水素の溶解度は小さくなる。

結局、水素水の水素部分はその多くが気体として存在することになる。そして、小腸へと送られ吸収が始まる。ひょっとしたら、水素が気体状態であっても小腸から吸収されるのではとの期待もある。私もそう思いたい。しかし、下の文献Aに「水素が一日に少なくとも150cc以上産生される。こうして産生された水素は,腸内ガスの成分として肛門より排泄されるか,呼気中へ排出される。」とあるように、水素ガスは一旦体内に取り込まれその後、肺から排出される経路もあるようだ。体内に取り込まれる水素の量は定かではないが、水素水の水素量5.5mlに対して体内で発生する水素量150mlである。呼気中に排泄されるということは、腸内発酵水素だけで十二分の水素が体内に吸収されているということだ。

文献Bには健常者には効果がなかったと記されている。

ということで、ppm単位の水素水では効果はほとんどないと考えられる。文献Aでは2%濃度の水素ガスを直接吸入させ、その作用機作ははっきりとはしないが病気を治療している。この延長線上で考えると、水素水などより、部屋に数百ppm程度の水素ガスを混入させる方が効果的ではないだろうか。水素ガスを腸から吸収させるよりも肺から継続的に吸収させる方が健康保持(アンチエージング?)に効果的である可能性もあるのでは?



画像




(文献A)
シグナルガスの急性肺傷害に対する効果(兵庫医科大学、日救急医会誌2013年)

急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome:
ARDS、下のWikipediaも参照のこと)は心原性の肺水腫を除く様々な原因で惹起される急性の低酸素血症であり,致死率が高く,臨床上重篤な病態の一つである。

H2 は,NOやCO,H2Sのように生体で内因性に産生されず,主に大腸に住む腸内細菌により,消化されない炭水化物などから一日に少なくとも150cc以上産生される。こうして産生されたH2は,腸内ガスの成分として肛門より排泄されるか,呼気中へ排出される。

2%水素ガスをレシピエント,あるいはドナーの手術中に吸入させたところ,虚血/ 再灌流によって起こるガス交換不全や炎症細胞の浸潤は有意に抑制された。


(文献B)
「飲むと健康に良い」と宣伝されている諸水製品類の実態の検討(杏林大学、杏林医会誌2012年)

水に水素を0.34mg/L(0.34ppm)の濃度で溶解したアルミニウム製バウチ入りのおいしい水素水(ブルーマーキュリー社)

我々の実験系では、健常者に対してなんらの影響を及ぼさなかった。

宣伝内容が実態と一致しない製品が多いことの原因は、医薬品や特定健康保健商品の場合と異なり、それらの製造・販売に当り、性状と効能を、正規の科学的手続きに則って証明することが求められていないからであろう。



参考情報として、


水素水(Wikipedia)


急性呼吸促迫症候群(Wikipedia)より引用

 敗血症、大量輸血、重症肺炎、胸部外傷、肺塞栓、人工呼吸、純酸素吸入、急性膵炎等で重症の患者に突然起こる。その初期段階における病態生理は様々であるが、最終的に発症に至る経緯及び治療法は同じである。

治療法は、

気管挿管を行い、人工呼吸管理が必要である。大量の気道分泌物によって肺胞虚脱や細気管支の閉塞が起きるため、高いPEEPにて管理する。集中治療室管理が必要である。

心不全を合併していなければ、肺動脈カテーテルの適応ではないと考えられている。

現在、以下の治療法が研究されている。
交感神経β2受容体作動薬:細気管支の拡張、気道分泌物の低下を狙ったもの
エラスターゼ阻害薬(シベレスタット)
一酸化窒素吸入:肺血流を増大させ循環動態を改善しようとするもので、中止時に反動で肺高血圧の悪化と酸素化の低下が見られることがある
人工サーファクタント投与:新生児呼吸窮迫症候群における治療と同じく、気道内の滲出液の排除を狙ったもの
腹臥位等




呼気水素試験による糖吸収能の比較(日本消化器病学会、昭和55年)

腸内ガスに大量に含まれる水素ガスは、拡散により血液中に入り、肺から呼気中に排泄される。その水素量は早朝絶食時で0.03ml/分、ラクツロース18グラム投与時で、0.1〜0.2ml/分である。




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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
規制緩和で取り締まることが出来なくなった誇大広告の悪用の見本ですね。

マウスの細胞を60歳から20歳に変えた「若返り物質」
ハーバード大学らのチームはNMNという物質をを生後2歳マウス(ヒト換算では60歳)の細胞に注入したところ、生後6ヶ月(ヒト換算では20歳)の時点まで若返らせることに成功しました。このNMNとはどういう物質か、またヒトの若返りの可能性について、老化プロセスと糖尿病の最新研究をレポートします。
http://allabout.co.jp/gm/gc/450932/
匿名
2016/06/21 18:29
病人と健康人を混同している、という私的です。
−−−−−−−−−−−

水素に過剰な期待が寄せられる背景には「水素が活性酸素を抑える」という言い方にもあるような気がする。水素の作用メカニズムの解明を目指す大野欽司・名古屋大学大学院教授(神経遺伝情報学)の研究で、水素の作用の本質は活性酸素の抑制ではなく、水素がヒトの細胞内の分子に作用し、遺伝子の働きを調節することも分かっている。

 水素は活性酸素を抑えるから健康に良いという単純な話ではないのだ。

 現状では、臨床研究に着目すれば「効果がある」とも言えるし、市販の水素水が機能性表示食品にさえなっていない点に着目すれば「効果がない」とも言える。水素水のどの側面を見るかでどちらも成り立つ。

 私が期待するのは、患者を対象とする臨床研究の進展であり、健康な人を対象とする水素水ビジネスの繁盛ではない。偏った見方が強くなって、臨床研究が滞るのはよくない。消費者は水素水ビジネスの宣伝文句に踊らされることなく、どういう研究が進んでいるかを自分で調べて冷静に判断することも必要だと思う。毎日新聞 http://mainichi.jp/articles/20160623/ddm/005/070/021000c
匿名
2016/06/23 09:21
匿名様

本文(文献A)に「2%水素ガスをレシピエント,あるいはドナーの手術中に吸入させたところ,虚血/ 再灌流によって起こるガス交換不全や炎症細胞の浸潤は有意に抑制された。」とあるように、高濃度水素は医療的に有効なことがあるようです。ご紹介いただいた毎日新聞記事も、使用している水素の濃度は分かりませんが、現れた効果にはそれなりの理由があるでしょう。最近では、非常に低濃度の一酸化窒素や一酸化炭素がある症例に有効との記事も見受けられます。こんな単分子がどのように降下を発揮しているのかと思うのですが、人間の体は微妙なものです。
さて、もう一つ紹介いただきましたNMNなる物質は面白いです。塩基の部分をアデノシンに変え、リン酸残基を長くするとアデノシン三リン酸(ATP)です。リン酸が一つですのでアデノシン一リン酸(AMP)の変形と言うことになりますか。リン酸がOHとエステル結合をしたサイクリックAMPは高エネルギー物質でその生理作用に興味が持たれています。何らかの関係があるような気もします? 環状アデノシン一リン酸(Wikipedia)には、その生理活性が記述されています。若返りと関係はないかもしれませんが・・・

アルケミスト
2016/06/24 21:33
非常に低濃度の一酸化窒素や一酸化炭素がある症例に有効との記事も見受けられます。
★ 一酸化窒素
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E9%85%B8%E5%8C%96%E7%AA%92%E7%B4%A0
似た気体の亜酸化窒素
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%9C%E9%85%B8%E5%8C%96%E7%AA%92%E7%B4%A0

うろ覚えですが最近の研究では細胞中の酸素濃度の生理作用があるようです。
細胞中の酸素濃度やその分布を測定追跡できるとは凄いなぁ〜と驚いています。
匿名
2016/06/25 07:00

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