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zoom RSS 親の学習内容や経験は子供に遺伝するか?

<<   作成日時 : 2014/01/06 00:23   >>

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 優秀な親は優秀な子供を残す。これはメンデルの遺伝の世界である。遺伝子に組み込まれた形質が確率的に子供に伝わっていく。環境に不利な子孫は滅び、環境に適合するものだけが生き残る。人間社会においても優秀な体操選手の子供は優秀であることは多い。確かに、DNAを通しての遺伝はある。DNAが体の構成を決定づけるので、これには異論はない。ただし、これは体に備わった運動能力の話であり、長い年月をかけたメンデルの掛け合の結果として生じたものである。

 才能は遺伝するか? これは難しい問題である。音楽家の家系に優秀な音楽家が生まれてくる例(たとえばバッハの家系)はあるが、遺伝か環境かを識別することは難しい。長年にわたって遺伝か環境かの議論がなされているが、人間を実験材料としてこの答えを得ることは難しい。親が学習したことが子供に遺伝していくようであれば、優秀な男と優秀な女が結婚して生まれた子供は優秀である確率が高いことになる。しかし、現実はご存知のとおり、これは正しくもあり正しくもなし、といったところだ。

 ところが、日本経済新聞に経験は遺伝しないとの常識を覆すニュースが掲載された。ネズミの例ではあるが、親の経験がその子孫に連綿と遺伝していくという。その詳細はこれから解明されてくることと思うが、画期的あ発見である。この記事に示されたネズミが「恐怖心」を本能?として獲得したように、動物の持つ本能というものは、代を経るに従い経験が少しづつ蓄積された結果である可能性もある。今回の発見の延長線上には、iPS細胞の機能発現のメカニズムがこの本能発揮のメカニズムにも関連している可能性があり(と私は思っている)、興味深い。今後の進展が楽しみである。

 恐怖の体験は精子を伝って遺伝し、喜びの体験は卵子を伝って遺伝する?




 日本経済新聞(1月5日)に「『恐怖の記憶』が遺伝する? 常識覆す実験結果に脚光」との記事があった。曰く、

 「恐怖の記憶」が子孫に遺伝することをネズミの実験で示した。ネズミに化学物質アセトフェノン(C6H5COCH3)をかがせて電気ショックを与えた。実験を繰り返すとネズミは匂いを嗅いだだけで痛みに身構えるようになる。ここまでは条件反射として知られている。この電気ショックを学習したネズミから生まれた子供を調べたところ、アセトフェノンの匂いを嗅いだだけで身構えた。親の学習が子供に遺伝したことになる。学習した親ネズミとその子孫ではアセトフェノンの匂いを感じるレセプター(受容体)が普通のネズミより増えていることが確認された。
 近年、エピジェネティクスと呼ぶ現象が注目を集めている。遺伝子自体に変異がなくても、遺伝子の集合体であるDNAに他の分子がくっつくことで遺伝子の働きが制限されることがある。このエピジェネティクスが今回の実験に関わる可能性を探っている。


エピジェネティックス(Wikipedia)

 一般的には「DNA塩基配列の変化を伴わない細胞分裂後も継承される遺伝子発現あるいは細胞表現型の変化を研究する学問領域」である。

 多くの生命現象に関連し、人工多能性幹細胞(iPS細胞)・胚性幹細胞(ES細胞)が多様な器官となる能力(分化能)、哺乳類クローン作成の成否と異常発生などに影響する要因(リプログラミング)、がんや遺伝子疾患の発生のメカニズム、脳機能などにもかかわっている。

ラマルキズムとの関連

 エピジェネティクスはラマルキズムまたはネオ・ラマルキズムと同じようなものと考えられることもあるが、それらを支持する研究分野ではないことに注意が必要である。エピジェネティックな表現型変化は遺伝子の突然変異を原因とするものではないが、エピジェネティックな機構そのものは遺伝子の制御の下にある。

リプログラミングとクローン個体作成

 多細胞生物の細胞は、エピジェネティックな状態の継承によって特異的な機能を維持しているが、別種類の細胞となる分化能が制限されることがある。細胞(細胞核)が、それまでに継承・蓄積してきたエピジェネティックな標識を消去・再構成し、分化能を取り戻すことをリプログラミング(再プログラム化・初期化)と呼ぶ。

iPS細胞でのリプログラミング

 再生医療において人工多能性幹細胞(iPS細胞)・胚性幹細胞などを利用した器官回復が研究されている。体細胞由来のiPS細胞は、エピジェネティクス的に見ると、数種類の遺伝子の導入による人為的リプログラミングによって分化万能性を復元させた細胞である。



追加情報

ハザードラボ 2013年12月5日

「トラウマ体験」は遺伝する マウス実験で証明

 米国の研究チームによる論文が2日、科学誌ネイチャー・ニューロサイエンス電子版に掲載された。オスのマウスの足に電気ショックを与えながら、特定の臭いをかがせ、この臭いを恐れるように訓練する。このオスの子どもと孫に、同じ臭いをかがせると、ひどくおびえた様子を見せた。人工授精により「父親の教育」という要素を排除してもだ。

 このオスの精子を調べると、嗅覚をコントロールする遺伝子情報に、「メチル化」と呼ばれる変化が起きていた。

 最近『エピジェネティクス』と呼ばれる研究領域がある。これまでのDNA塩基配列では説明のつかない個体差について、本当は塩基配列の他に、経験を細胞に刻み込む別の遺伝方法があるのではないか?と考えて、そのメカニズムを解き明かす研究領域だ。

 そして、このエピジェネティクスが注目している、「別の遺伝の仕組み」の有力候補が、オスのマウスの精子に見られたような「DNAのメチル化」という現象。

 これからの研究分野なだけに、まだまだ検証しなければならないことは山ほどあるが、今回の実験を見る限り、身体的な「形質」だけでなく、「経験、もしくは記憶」(少なくとも何度も味わうようなひどいトラウマ体験)も後世に遺伝するらしい。(いや、正確には経験そのものが遺伝するのではなく、「脳細胞の変化という形質」として遺伝するのだが)


Associe 2009年8月17日 
良い経験は子供にも“遺伝”する

 「遺伝」とは、遺伝子が媒介するものであって、例えば、親が個人的に経験したことは子孫に遺伝しないというのが常識だろう。

 ところが、この常識を覆す衝撃的な実験データが報告された。米タフツ大学のフェイグ博士らの研究である。なんと、母親が若い頃に良い経験をすると、その良い影響が子供に“遺伝”するというのだ。あくまでもネズミの実験ではあるが、フェイグ博士ら自身も、同論文に「似た現象がヒトでも生じるとしたら」と想像を膨らませているほど、思わず考えさせられてしまう実験である。

 遺伝子コードが変化するわけではないが、染色体やDNAが後天的に「化学修飾」を受けて遺伝子機能が変化することを「エピジェネティクス」という。フェイグ博士らの発見もエピジェネティクスを巡る話題である。驚くべきは、その影響が後天的であるにとどまらず、子供の世代にまで及ぶことである。

 生後2週目から4週目のわずか2週間のみ豊かな環境に入れただけで、海馬の機能が十分に高まり、しかもこの効果がその後一生持続することを見出している。ちなみに、ネズミでいう生後2〜4週目とは、ヒトで言えばおよそ思春期に相当すると考えてよいだろう。

 フェイグ博士が見い出したさらに興味深い事実は、こうして海馬の機能を高めたネズミの子供たちもまた海馬の機能が高かったという発見だ。子供たち自身は豊かな環境を経験していないにもかかわらず、海馬の機能が高く、記録力も増強されていた。

 フェイグ博士はこの効果をさらに詳細に追求している。まず、子供のさらに子供、つまり豊かな環境で育ったネズミの孫への影響はどうだろうか。検査をしてみると孫には影響がなかった。つまり環境の効果は2世代目までに限られるということだ。

 次の疑問は「この効果は父親と母親どちらから受け継ぐのだろうか」という点だ。フェイグ博士は一方の親のみ豊かな環境で育て、子供の能力を測定した。すると、父親のみでは効果がなく、逆に、母親さえ豊かな環境で育てば、子供の海馬機能が高まることが分かった。ちなみに、これはエピジェネティクスの知見からも納得できるものだ。というのは、染色体やDNAへの後天的な化学修飾は、精子ではリセットされるのだが、卵子では引き継がれるからである。


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