ミツバチを死に追いやるネオニコチノイド系農薬? は本当か?
1月4日のブログでも記しましたが、ネオニコチノイド系農薬はミツバチにも人にも影響を及ぼしている可能性があります。それに関する最近の記事。そして、専門化学雑誌上で繰り広げられているバトルについて紹介します。ただし、バトルといっても一方的に喧嘩をしているというのが正しいかもしれませんが。
ミツバチがいなくなると果樹などへの受粉を人がしなければならなくなります。また、多くの野生の植物が実をつけることができなくなり、その結果、植生が変わっていく可能性が出てきます。ミツバチを守ることは自然を守ることに通じます。多くの科学者が蜂群崩壊症候群の真の原因を追い求めていますが、どうもまだその結論には至っていないようです。
現代化学の両論文の著者も、互いに膝を交える座談会を持ち、建設的に原因究明に至る道もあるのではないかと感じられました。
雑誌 現代化学 2013年10月号 pp.54-59
新農薬ネオニコチノイドはミツバチの大量死を引き起こす 金沢大学 山田敏郎
ネオニコチノイド農薬
植物への高い浸透性、DDTの5000倍以上の殺虫性能、生体内に長く留まる残効性、難分解性
実験方法
高濃度、中濃度、低濃度の農薬を与え続けて、ミツバチ実験軍の様子を観察した。
実験結果
高濃度では急性毒性により大量死が起こり、中濃度、低濃度では慢性毒性により群れが絶滅したと推定した。
ジノテフランやクロチアニジン投与後、蜂群はすぐに縮小して蜂群崩壊症候群の様相を呈し、絶滅した。
雑誌 現代化学 2014年1月号 pp.67-68
ネオニコチノイドに関する山田論文の問題点について 問題提起者は下に示した
農薬の濃度設定における過ち
低濃度でもミツバチの致死量を超えている。いずれの濃度における実験でも、単にミツバチの急性毒性による「大量」の斃死(へいし)を再現したに過ぎない。
蜂群崩壊症候群の認識の過ち
蜂群の25%が越冬できずに消失するが、それが崩壊症候群と誤って捉えられ、ニュースとなっている。2013年のアメリカの報告では、越冬できなかった要因として、秋季に群れが弱かった(34%)、女王がいなくなった(32%)、餌不足(31%)、ミツバチヘギイタダニ(18%)、不完全な越冬準備(10%)、蜂群崩壊症候群(9%)となっている。
最後に
誤謬の多いこの論文が議論の土台として扱われるのはゆゆしきことである。
世界におけるミツバチの現状と減少要因 化学と生物 Vol.48, No.8, 2010
ミツバチ減少の要因
農薬 致死量より低濃度のネオニコチノイド系農薬に晒された場合の影響は不明
フランスではこの農薬の使用が10年前に禁止されたが、ミツバチの現象は続いている
筆者もこの農薬とミツバチ現象の明確な関連性をまだ見出していない
考えられる他の要因
ヘギイタダニ ウイルス 細菌 ノゼマ微胞子虫
日本新華夏株式会社 1月28日
世界各地では蜜蜂が大量に死亡 タバコ輪点ウイルスが元凶か
最近の Google News より
朝日新聞ニュース 2月8日
脱ネオニコチノイド農薬
【堀井正明】よつ葉生活協同組合(小山市)が、ネオニコチノイド系農薬=キーマーク=を使わない農産物の販売に取り組み始めた。1990年代から使われ始めた。植物に浸透し、効果が長く続く特徴がある。虫に対する神経毒性があり、ミツバチ大量死の原因との指摘もある。人体への害は少ないとされ、国内外で広く普及している。
ネオニコチノイド系農薬は植物が吸収して効果を発揮するため、洗っても落ちない。ネオニコチノイド系農薬の対策は使わないことしかない。 強い殺虫力を持つネオニコチノイド系農薬は、1990年ごろから世界的な問題になってきたミツバチ大量死の原因であると指摘されてきた。
花粉交配で欧州の農業を支えるミツバチの大量死を重く見た欧州連合(EU)は、昨年12月から当面2年間、ネオニコチノイド系の3種類の農薬(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)の使用を禁止した。
欧州食品安全機関(EFSA)も同時に、ネオニコチノイド系農薬2種類(アセタミプリド、イミダクロプリド)が子どもの脳の発達に悪影響がある可能性を公表し、規制を強めることにした。
ネオニコチノイド系農薬の規制が始まったEUに対し、日本では農水省が今年度から3年間かけてミツバチの被害実態調査に乗り出したばかりで、規制強化の動きは見られない。
毎日新聞 2月3日
農薬残留基準:ネオニコチノイド系緩和方針凍結を申し入れ
厚生労働省がネオニコチノイド系農薬の食品への残留基準を緩和する案を検討していることについて、環境NGO「グリーンピース・ジャパン」など5団体は3日、緩和方針を凍結するよう同省に申し入れた。この農薬はミツバチ大量死の原因の一つと指摘されている。5団体は「EU(欧州連合)が使用規制を始めた中、日本の行政の対応は逆行している」と批判している。
見直しの対象は、ネオニコチノイド系農薬「クロチアニジン」の、野菜や穀類などへの残留基準値。すでに見直し案が同省薬事・食品衛生審議会の部会で了承された。それによると、ホウレンソウでは現行の3ppmから40ppmに、カブ類の葉は0.02ppmから40ppmに、ミツバは0.02ppmから20ppmに引き上げる。
クロチアニジンは昨年12月、EUがミツバチ保護の観点から使用規制に乗り出している。5団体は「ホウレンソウが特に問題。新基準が許容する残留濃度をEUの規制基準で解析すると、子ども(体重16キロ)が可食部分を40グラム食べただけで急性中毒を起こす可能性がある」と指摘する。
見直し案についてはパブリックコメント(意見公募)に1000件を超える意見が寄せられた。同省は「現在、内容を精査している段階。それを踏まえて対応を検討したい」と話している。【下桐実雅子】
2014年1月4日記事
ミツバチに被害の農薬 人間の脳・神経にも影響か
2009年5月
ミツバチは集団で逃亡します
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ミツバチがいなくなると果樹などへの受粉を人がしなければならなくなります。また、多くの野生の植物が実をつけることができなくなり、その結果、植生が変わっていく可能性が出てきます。ミツバチを守ることは自然を守ることに通じます。多くの科学者が蜂群崩壊症候群の真の原因を追い求めていますが、どうもまだその結論には至っていないようです。
現代化学の両論文の著者も、互いに膝を交える座談会を持ち、建設的に原因究明に至る道もあるのではないかと感じられました。
雑誌 現代化学 2013年10月号 pp.54-59
新農薬ネオニコチノイドはミツバチの大量死を引き起こす 金沢大学 山田敏郎
ネオニコチノイド農薬
植物への高い浸透性、DDTの5000倍以上の殺虫性能、生体内に長く留まる残効性、難分解性
実験方法
高濃度、中濃度、低濃度の農薬を与え続けて、ミツバチ実験軍の様子を観察した。
実験結果
高濃度では急性毒性により大量死が起こり、中濃度、低濃度では慢性毒性により群れが絶滅したと推定した。
ジノテフランやクロチアニジン投与後、蜂群はすぐに縮小して蜂群崩壊症候群の様相を呈し、絶滅した。
雑誌 現代化学 2014年1月号 pp.67-68
ネオニコチノイドに関する山田論文の問題点について 問題提起者は下に示した
農薬の濃度設定における過ち
低濃度でもミツバチの致死量を超えている。いずれの濃度における実験でも、単にミツバチの急性毒性による「大量」の斃死(へいし)を再現したに過ぎない。
蜂群崩壊症候群の認識の過ち
蜂群の25%が越冬できずに消失するが、それが崩壊症候群と誤って捉えられ、ニュースとなっている。2013年のアメリカの報告では、越冬できなかった要因として、秋季に群れが弱かった(34%)、女王がいなくなった(32%)、餌不足(31%)、ミツバチヘギイタダニ(18%)、不完全な越冬準備(10%)、蜂群崩壊症候群(9%)となっている。
最後に
誤謬の多いこの論文が議論の土台として扱われるのはゆゆしきことである。
世界におけるミツバチの現状と減少要因 化学と生物 Vol.48, No.8, 2010
ミツバチ減少の要因
農薬 致死量より低濃度のネオニコチノイド系農薬に晒された場合の影響は不明
フランスではこの農薬の使用が10年前に禁止されたが、ミツバチの現象は続いている
筆者もこの農薬とミツバチ現象の明確な関連性をまだ見出していない
考えられる他の要因
ヘギイタダニ ウイルス 細菌 ノゼマ微胞子虫
日本新華夏株式会社 1月28日
世界各地では蜜蜂が大量に死亡 タバコ輪点ウイルスが元凶か
最近の Google News より
朝日新聞ニュース 2月8日
脱ネオニコチノイド農薬
【堀井正明】よつ葉生活協同組合(小山市)が、ネオニコチノイド系農薬=キーマーク=を使わない農産物の販売に取り組み始めた。1990年代から使われ始めた。植物に浸透し、効果が長く続く特徴がある。虫に対する神経毒性があり、ミツバチ大量死の原因との指摘もある。人体への害は少ないとされ、国内外で広く普及している。
ネオニコチノイド系農薬は植物が吸収して効果を発揮するため、洗っても落ちない。ネオニコチノイド系農薬の対策は使わないことしかない。 強い殺虫力を持つネオニコチノイド系農薬は、1990年ごろから世界的な問題になってきたミツバチ大量死の原因であると指摘されてきた。
花粉交配で欧州の農業を支えるミツバチの大量死を重く見た欧州連合(EU)は、昨年12月から当面2年間、ネオニコチノイド系の3種類の農薬(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)の使用を禁止した。
欧州食品安全機関(EFSA)も同時に、ネオニコチノイド系農薬2種類(アセタミプリド、イミダクロプリド)が子どもの脳の発達に悪影響がある可能性を公表し、規制を強めることにした。
ネオニコチノイド系農薬の規制が始まったEUに対し、日本では農水省が今年度から3年間かけてミツバチの被害実態調査に乗り出したばかりで、規制強化の動きは見られない。
毎日新聞 2月3日
農薬残留基準:ネオニコチノイド系緩和方針凍結を申し入れ
厚生労働省がネオニコチノイド系農薬の食品への残留基準を緩和する案を検討していることについて、環境NGO「グリーンピース・ジャパン」など5団体は3日、緩和方針を凍結するよう同省に申し入れた。この農薬はミツバチ大量死の原因の一つと指摘されている。5団体は「EU(欧州連合)が使用規制を始めた中、日本の行政の対応は逆行している」と批判している。
見直しの対象は、ネオニコチノイド系農薬「クロチアニジン」の、野菜や穀類などへの残留基準値。すでに見直し案が同省薬事・食品衛生審議会の部会で了承された。それによると、ホウレンソウでは現行の3ppmから40ppmに、カブ類の葉は0.02ppmから40ppmに、ミツバは0.02ppmから20ppmに引き上げる。
クロチアニジンは昨年12月、EUがミツバチ保護の観点から使用規制に乗り出している。5団体は「ホウレンソウが特に問題。新基準が許容する残留濃度をEUの規制基準で解析すると、子ども(体重16キロ)が可食部分を40グラム食べただけで急性中毒を起こす可能性がある」と指摘する。
見直し案についてはパブリックコメント(意見公募)に1000件を超える意見が寄せられた。同省は「現在、内容を精査している段階。それを踏まえて対応を検討したい」と話している。【下桐実雅子】
2014年1月4日記事
ミツバチに被害の農薬 人間の脳・神経にも影響か
2009年5月
ミツバチは集団で逃亡します
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