本日は国際宇宙ステーション(ISS)に寿命が来ているという話と、近い将来に軌道エレベータ(宇宙エレベータ)が期待され、一般人でも安価に宇宙に行くことができる、という話が目に飛び込んできた。 ISSは質量420トン、109m×73m(高さは不明)と巨大構築物である。これを宇宙空間から取り除く方法について議論がなされ始めているようである。 スペースデブリ問題というのがある。宇宙ゴミである。ロケットや衛星そのもの、あるいはその破片が宇宙に漂っている。大きいものから小さいものまで、またその飛び交っている高度も速度もいろいろである。その詳細はこちらに記されている。この資料の中には広い宇宙空間であるにもかかわらず、2009年にIridium33とCosmos2251という衛星同士の衝突も起こり、新たにスペースデブリが生み出されたことも記されている。 宇宙空間で衛星が破壊されると、そこから多くのデブリが生じ、この生じたデブリがまた別の衛星にぶつかるという悪循環を繰り返す。従って、運用の終わったISSは、デブリ化を防ぐためにも、宇宙空間から取り除く必要性が生じてくる。 一方、軌道エレベータは、高度3万6000kmの静止衛星より蜘蛛の糸を地上に垂らすことにより建設が始まる。まずは細い糸を地上にまで導き、その糸をたどって材料を持ち上げ、次第にこの糸を太くしていく。明石大橋が建設された時に、最初はヘリコプターを使って細いロープを対岸まで到達させ、その端に結びつけたすこし太めのワイヤーを対岸から順次引き寄せることにより、最終的には太いワイヤーとした。これに似ている。 ISSと軌道エレベータを結びつけると次のようなシナリオが出来上がるのだが、可能だろうか。 1.使用済みのISSは糸巻きとして利用する。ISSまで運んだロケット推進システムによりISSを静止軌道にまで高める。 2.このISSより細いカーボンケーブルを地上まで垂らす。このとき、ISSから上方へもカーボンケーブルを放出し、重力のバランスをとる。 3.地上に到達したカーボンケーブルを伝って材料を引き上げ、カーボンケーブルを次第に太く強固なものとしていく。また、ISSも静止軌道より次第に高い軌道に移動させて重力のバランスをとる。 4.カーボンケーブルを伝って材料を持ち上げ、居住用スペースを建設する。同時に、ISS本体は分解してケーブルを伝って地上へと下ろす。 5.かくして、軌道エレベータとISSの廃棄問題はともに成就する。 ここで少し蛇足ながらスペースデブリに関する考察をする。 赤道上からカーボンワイヤーが宇宙居住用スペースまで伸びている。そのカーボンワイヤーは常にスペースデブリスとの衝突の危険にさらされる。また、貴重な衛星もカーボンワイヤーに触れて破損する可能性もある。上で示したように、衛星同士が衝突する宇宙である。 いま、ISS並の衛星(幅100m)が高度400kmの軌道を回っているとする。地球中心からの距離を考慮すると、この高度での一周は42512kmとなる。衛星は90分でこの軌道を一周する。 もし、衛星が赤道上を回っているとすると、衛星は間違いなく軌道エレベータの蜘蛛の糸に引っかかる。その時どうなるか? 想像ができない。自然界では蜘蛛の糸にクマゼミが引っかかった時には蜘蛛の勝ちである。 衛星が南極と北極を経由する軌道を回っていた時には? この場合は、地球の公転につれて次第に軌道が移っていき、一年で赤道上を一周することになる(正確には上空を二回通過する)。16周/日×365日/年×2×衛星の大きさ10mで年に赤道を1168km幅侵食することになる。赤道上の軌道一周は42512kmであるから、確率的には36.4年で蜘蛛の糸に触れることになる。ISSであれば軌道と赤道との傾斜角51.6°であるから、その確率はもう少し高くなり、28.5年となる。 Wikipediaにはこの衝突を配慮して、地上基地は移動可能にしておくべきとある。ISSでもスペースデブリが近づくとその高度を変化させているのが実態であるが、さて、地上基地の位置を少し変化させただけで、数百km先の蜘蛛の糸をうまく時間内にコントロールできるかははなはだ疑問である。なにせ、衛星同士(大きくても10m?)が点で衝突するのである。蜘蛛の糸は線である。その衝突確率は考えただけでも数千倍は高いものとなる。 withnews 2月27日 史上最大の宇宙建築物 ISS廃棄、どうする? 迫る寿命あと5年 史上最大の宇宙建築物である国際宇宙ステーション(ISS)、実はあと5年の寿命です。どこに、どうやって落下させるのか。今から、議論が始まっています。 使用期限は2020年まで 大きさ、サッカーのピッチくらい 地球圏外への移動は不可能 バラバラになって落下か 「ミール」では大騒ぎ 日本経済新聞 2月27日 軌道エレベーター(宇宙エレベーター) 書籍紹介 軌道エレベータ(Wikipedia) 宇宙空間への進出手段として構想されている。カーボンナノチューブの発見後、現状の技術レベルでも手の届きそうな範囲にあるため、実現に向けた研究プロジェクトが日本やアメリカで始まっている。 ケーブルの振動や熱による伸縮への対策、低軌道の人工衛星や大きなスペースデブリとの衝突の回避などのために、アース・ポートは地上に固定するのではなく海上を移動可能なメガフロートとすることが望ましい。 ブログ一覧に戻る ホームページ「アルケミストの小部屋」に戻る |
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宇宙エレベーターは、コンクリート橋桁を橋脚の両側に延ばす工法「張り出し架設工法:http://www.psmic.co.jp/gijyutu/civil_eng/pdf/01_jyobu4.pdf」を思い出させます。 |
匿名 2015/02/28 07:14 |
匿名様 |
畑啓之 2015/02/28 08:14 |
エレベータの積載重量はこの張力と地上におけるエレベータ+積載物の荷重により決まってくることになります。荷重を増やしたいのであれば、ステーションを静止軌道距離よりもより遠くに置くことになるでしょう。 |
匿名 2015/02/28 20:33 |
匿名様 |
畑啓之 2015/02/28 23:51 |
大学入試センター試験 理科総合A |
匿名 2015/03/01 10:41 |
匿名様 |
畑啓之 2015/03/01 18:40 |
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