実験の失敗データも立派なデータ 失敗がやっと市民権を得て日の当たる場所に? 住友化学など

昨日の日本経済新聞(2016年12月25日)の記事に、

  「失敗」実験 ヒットの種 データ共有 開発に活用 住友化学や三菱ケミカル

  住化は17年4月から電子機器向け部材の研究開発部門の一部で実験ノートをタブレット端末に切り替える。
  成功した実験だけでなく、失敗した場合も条件や化学反応の結果などをデータとして記録。

この記事を読んで2つのことを感じた。

ひとつは、

住友化学や三菱ケミカルほどの会社がなぜ今頃になってこのような取り組みの重要性に気が付いたのだろう、という疑問である。進まなかった反応や、思ったものとは違う生成物を与えた反応、あるいは、反応以外でも機能について、それらは単に失敗と言うことではなく、非常に重要な情報を含んでいる。全く違った成功への入り口(セレンディピティ)となり得る場合もある。

一般に、文献や特許には成功事例は記載されているが、失敗事例は記載されていない。どのようなことをすればどのような失敗が起こるのか、ということを知ることは成功への入り口となることが多い。わたしも、会社では多くの前任者の失敗事例を読み、学び、そこから研究の成功をつかんできた。

そして、もうひとつは、

失敗事例を積み上げたところで、それをうまく利用する人がいなければ、そのデータ蓄積の努力は無駄になるということである。同じカテゴリーのテーマで、前任者が多くの仕事をし、多くの成功事例や失敗事例があるが、研究者で過去に学び、それを今に活かそうという人は少ない。蓄積したデータをどのように活かしていくのか、興味の持たれるところである。

過去の失敗事例(データ)を一番上手に生かしているのは、製薬メーカーではないだろうか。何万と言う化合物を蓄積し、それをことあるごとに引っ張り出してスクリーニングにかける。これと同じような、仕組みづくりが、今回の話には必要だろう。そして、スクリーニングで選び出された情報から何かを感じ取れる研究者の「感」の醸成が求められる。


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